銀行と話せる数字の作り方 第5回

銀行に何を説明すれば融資相談が進みやすいか 決算書だけでは伝わらない6つのポイント

銀行へ決算書や試算表を提出していても、 会社の現状や今後の見通しが十分に伝わっているとは限りません。 融資相談では、数字の背景と返済までの流れを説明することが重要です。

銀行が確認したいのは、 いくら売れるかだけでなく、借りた資金をどう返すかです。

銀行に融資を相談する際、多くの経営者は決算書、試算表、 見積書などを準備します。

もちろん、これらは必要な資料です。 しかし、資料を提出するだけでは、銀行担当者が知りたい 「なぜ資金が必要なのか」「どのように返済するのか」 という部分までは伝わりません。

銀行担当者は、提出された数字をもとに、 社内で融資の必要性や返済可能性を説明します。 そのため、経営者側が数字の背景、今後の見通し、改善策まで整理しておくと、 融資相談を進めやすくなります。

本記事では、銀行に説明すべき数字と論点、 面談前に準備したい資料について整理します。

01

銀行が知りたいのは返済できるか

銀行に融資を相談するとき、経営者は売上規模や事業の将来性を 強く説明する傾向があります。

売上や成長性も重要ですが、銀行が最終的に確認したいのは、 融資した資金を予定どおり返済できるかどうかです。

経営者が説明しやすいこと

売上と将来性

市場が伸びている、新しい顧客が増える、 設備導入によって売上が拡大する。

銀行が確認したいこと

返済可能性

利益とキャッシュを生み出し、 借入金を無理なく返済できるか。

重要な考え方

銀行への説明は、 売上の話から返済の話までをつなげることが重要です。

「売上が増える見込みです」で終わらず、 売上からいくら粗利が残り、固定費を差し引いた後にいくら利益が残るか、 その利益で年間返済額を賄えるかまで説明します。

02

資料提出と説明は別のもの

決算書や試算表を銀行へ提出していても、 数字の背景まで自動的に伝わるわけではありません。

資料を提出する

数字を渡す

  • 決算書
  • 試算表
  • 借入金一覧
  • 見積書
  • 資金繰り表

内容を説明する

数字の意味を伝える

  • なぜ売上が増減したのか
  • 粗利率が変化した理由
  • 資金が減った原因
  • 今後の改善策
  • 返済できる根拠

例えば、利益が減っている場合でも、 設備修繕や採用費などの一時的な要因なのか、 粗利率低下などの構造的な要因なのかによって、 銀行の受け止め方は変わります。

決算書は結果を示す資料です。 経営者は、その結果になった理由と今後の対策を説明します。

03

銀行に説明すべき6つのポイント

融資相談では、次の6項目をひとつの流れとして説明すると、 銀行担当者が会社の状況を理解しやすくなります。

1

現在の業績

売上、粗利、営業利益、経常利益がどう推移しているか。

2

資金使途

借入金を何に使い、なぜ今必要なのか。

3

必要額

見積りや資金繰りに基づき、いくら必要なのか。

4

返済原資

どの事業の利益やキャッシュから返済するのか。

5

今後の見通し

売上、利益、資金残高が今後どう推移するのか。

6

課題と対策

現在の問題と、改善のために何を実行しているか。

現在地 資金需要 将来計画 返済

各項目が別々ではなく、 「現在の業績から、なぜ資金が必要となり、 借入後にどのように利益とキャッシュを生み出すのか」 という一つの流れになっていることが重要です。

04

業績は売上・粗利・利益で説明する

業績を説明するときは、売上高だけを見るのではなく、 粗利と利益がどのように推移しているかを確認します。

売上

仕事量・販売量

受注や販売が増えているか、減っているか。

粗利

稼ぐ力

原価上昇や値下げにより粗利が減っていないか。

利益

返済の原資

固定費を差し引いた後に利益が残っているか。

売上が増えていても、原材料費や外注費の増加によって 粗利率が下がっていれば、返済力は高まりません。

業績説明で確認する数字

  • 前年同期比の売上高
  • 粗利額と粗利率の推移
  • 人件費・外注費・広告費などの増減
  • 営業利益・経常利益の推移
  • 一時的な費用や特殊要因の有無
  • 今期の着地見込み

05

資金使途と必要額を明確にする

融資相談では、「念のため多めに借りたい」という説明ではなく、 何にいくら必要なのかを具体的に示します。

設備資金

購入・工事費

機械、車両、店舗、システム、付帯工事など。

運転資金

入金までの立替

仕入、外注、人件費、在庫、売掛金増加など。

借換資金

返済条件の整理

複数借入の一本化や返済負担の調整など。

必要借入額の考え方

必要資金総額 − 自己資金 = 借入希望額

設備本体だけでなく、運搬費、設置工事、初期仕入、 売上が入金されるまでの運転資金まで含めて計算します。

借入希望額は、銀行から借りられそうな金額ではなく、 事業に本当に必要な金額から算出します。

06

返済原資と資金繰りを示す

融資相談で重要なのは、 借入後の利益とキャッシュから返済できることを示すことです。

返済原資の基本的な考え方

税引後利益 減価償却費

= 返済に充てられるキャッシュの目安

ただし、利益と減価償却費が年間返済額を上回っていても、 売掛金や在庫が増加している場合は、手元資金が不足することがあります。

損益上

返済できるように見える

利益と減価償却費が年間返済額を上回っている。

資金繰り上

現金が足りない可能性

売掛金・在庫・納税・設備支払いで資金が減少する。

銀行へ示したい資金繰り

  • 借入前の現預金残高
  • 借入金の入金予定
  • 設備代金や仕入代金の支払時期
  • 売上代金の入金時期
  • 既存借入と新規借入の返済額
  • 借入後3か月から12か月の現預金推移

07

悪い情報ほど先に説明する

売上減少、赤字、取引先の減少、資金繰り悪化などの情報を 銀行へ伝えにくいと感じる経営者は少なくありません。

しかし、銀行が不安を感じるのは、 悪い数字そのものだけではなく、 原因や対策が分からない状態です。

説明が不足している状態

数字だけが悪化

  • 売上が減っている
  • 利益が赤字になっている
  • 現預金が減っている
  • 理由が説明されていない

説明できている状態

原因と対策が明確

  • 悪化した原因を特定している
  • 一時的か構造的かを区別している
  • 改善策を実行している
  • 今後の数値見通しを示している

悪い数字を隠すのではなく、 原因・影響・対策・改善時期をセットで説明します。

早い段階で相談できれば、借入、借換、返済条件の調整など、 選択肢を検討する時間も確保しやすくなります。

08

銀行面談前に準備する資料

銀行面談では、資料を増やしすぎるより、 必要な情報を整理して説明できる状態にすることが重要です。

1

決算書

直近2期から3期分の決算内容を確認。

2

最新試算表

今期の売上・利益・財政状態を確認。

3

借入金一覧

銀行別残高、返済額、金利、期限を整理。

4

資金繰り表

今後の入出金と現預金残高を確認。

5

資金使途資料

見積書、投資内容、仕入計画など。

6

説明メモ

現状、課題、対策、今後の見通しを整理。

面談での説明順序

会社の現状 資金が必要な理由 借入後の計画 返済方法

A4用紙1枚から2枚程度の説明メモに、 面談で伝える内容を整理しておくと、 話が脱線しにくくなります。

09

定期報告で銀行との信頼を作る

銀行対応は、融資が必要になったときだけ行うものではありません。

決算後や四半期ごとに業績と今後の見通しを報告しておくことで、 銀行担当者が会社の状況を理解しやすくなります。

月次

数字を整える

試算表、資金繰り、借入返済、予実差異を確認。

四半期

状況を整理する

業績、資金繰り、課題、改善策をまとめる。

銀行報告

見通しを共有する

今後の投資、借入、返済計画を説明する。

定期的に情報を共有していれば、 急な資金需要が発生した際にも、 背景を一から説明する負担を減らせます。

銀行対応の基本

銀行との信頼は、融資を依頼するときだけではなく、 平常時の情報共有によって作られます。

SUMMARY

まとめ

銀行への融資相談では、決算書や試算表を提出するだけでなく、 数字の背景、資金使途、今後の見通し、返済原資を説明する必要があります。

01

銀行が確認する中心は返済可能性

02

決算書の数字と、その背景を説明する

03

資金使途と必要額を具体的に示す

04

返済原資と今後の資金繰りを示す

05

課題と改善策を定期的に共有する

銀行対応で大切なのは、良い数字だけを見せることではありません。 会社の現状と今後の見通しを、数字と対策で説明できる状態を作ることです。

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