銀行と話せる数字の作り方 第1回
その試算表、
銀行に説明できますか?
試算表があることと、経営判断に使えることは違います。
資金繰り・借入返済力・銀行対応・投資判断に使える数字へ変換する考え方を解説します。
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試算表はある。でも、経営判断に使えていますか?
毎月、試算表は出ている。売上も、粗利も、利益も確認している。 それでも、次のような問いにすぐ答えられない会社は少なくありません。
もし、この問いに答えに詰まるなら、問題は「試算表がないこと」ではありません。 問題は、試算表を経営判断に使える数字へ変換できていないことです。
試算表は「答え」ではなく「材料」です
試算表は、会社の状態を知るうえで非常に重要な資料です。 売上、粗利、販管費、営業利益、経常利益など、会社の過去の結果を確認できます。
しかし、試算表に載っている数字を見ただけで、経営判断ができるわけではありません。 経営者が本当に知りたいのは、資金が足りるか、返済できるか、投資できるか、銀行に説明できるかという判断です。
試算表に載っている数字
- 売上
- 粗利
- 販管費
- 利益
経営者が判断したいこと
- 資金は足りるか
- 返済できるか
- 投資できるか
- 銀行に説明できるか
この問いに答えるには、試算表の数字をそのまま読むだけでは足りません。 判断に使える形へ、数字を組み替える必要があります。
経営者が知りたい本当の問い
経営者が知りたいのは、単に利益が出ているかどうかだけではありません。 本当に知りたいのは、次のような問いです。
- 今の利益で借入返済はできるのか
- 追加で借入しても問題ないのか
- 売上が下がったら、資金は何か月持つのか
- 投資したお金は回収できるのか
- 銀行から見て、この会社はどう見えるのか
こうした問いに答えられる数字が、経営判断に使える数字です。
黒字でも、お金が残るとは限らない
ここで重要なのが、利益とキャッシュは違うという点です。 試算表では黒字になっていても、実際には現預金が増えていないことがあります。
黒字に見える理由
売上は計上され、試算表上では利益が出ている。 しかし、その売上代金の入金はまだ先ということがあります。
現金が減る理由
在庫や仕入れで先に支払いが発生し、借入返済や納税でも現金が出ていきます。
特に注意すべきなのが、借入返済です。 借入の元金返済は、損益計算書上は経費として見えにくい一方で、現金は確実に出ていきます。
銀行借入は、売上ではなくキャッシュで返す
銀行借入の返済は、売上から返すわけではありません。 利益だけで返す、という表現も少し不十分です。
実際には、会社に残ったキャッシュから返済します。 そのため、銀行が見るのは、単に売上が増えているかどうかではありません。 この会社は、借入を返し続けるだけの返済原資を生み出しているか。ここが重要になります。
返済原資は、ざっくり言えば、税引後利益に減価償却費を足し戻したものです。 実務では会社の状況や金融機関の見方によって確認方法は異なりますが、基本的には「返済に回せるキャッシュ」を見る考え方です。
銀行が見ている主な数字
銀行が見ているのは、売上や利益だけではありません。 主に確認されるのは、次のような数字です。
たとえば、利益は出ていても、年間返済額が大きすぎれば返済負担は重くなります。 現預金があっても、数か月後に納税や賞与、設備更新が控えていれば、実際に使える資金は少ないかもしれません。
銀行と話すときに大切なのは、試算表を出すことだけではありません。 過去の結果、今後の見通し、返済力、改善アクションをセットで説明できる状態にしておくことです。
試算表を「判断用の数字」に変換する
試算表を経営判断に使うには、数字を次の4つに変換して見る必要があります。
資金繰り
今後の入金・支払い・資金不足リスクを確認する。
借入返済力
返済原資と年間返済額を比較し、返済余力を見る。
銀行対応
銀行に説明すべき数字と論点を整理する。
投資判断
設備投資・採用・広告投資後も資金が回るかを見る。
数字を見るだけではなく、次に何を判断するか。 ここまでつなげて初めて、試算表は経営に使える資料になります。
月次で見るべき5つの視点
毎月、最低限見ておきたい数字は5つです。
| 視点 | 確認すること |
|---|---|
| 売上 | 計画通りに売れているか |
| 粗利 | 売上が増えていても、粗利率が下がっていないか |
| 固定費 | 人件費・家賃・外注費・広告費などが増えすぎていないか |
| 現預金 | 利益ではなく、実際にお金が残っているか |
| 借入返済力 | 今の利益とキャッシュで、借入を返し続けられるか |
この5つを毎月確認するだけでも、試算表の見方は大きく変わります。
投資判断は「売れそう」ではなく「資金が回るか」で見る
設備投資、人材採用、広告投資。 これらは会社を成長させるために必要な判断です。 しかし、感覚だけで決めるのは危険です。
- 返済額はいくら増えるのか
- 固定費はいくら増えるのか
- 売上が計画より遅れた場合、資金は持つのか
- 最悪の場合でも会社が倒れないか
投資判断では、「売れそうか」だけでなく、資金が回るかを見る必要があります。
銀行と話せる数字とは
銀行と話せる数字とは、単なる試算表のことではありません。 必要なのは、次の4つが整理されている状態です。
銀行は、悪い数字そのものを嫌うのではありません。 むしろ嫌うのは、会社の状況が分からないこと、そして経営者が対策を説明できないことです。
試算表を見せるだけでなく、そこから何が分かり、今後どうするのかを説明できること。 それが、銀行と話せる数字を持つということです。
まとめ:試算表はゴールではない
試算表は重要です。 しかし、試算表だけでは経営判断はできません。
なぜなら、試算表は過去の結果であり、経営者が必要としているのは未来の判断だからです。
過去を見る
試算表で売上・粗利・利益を確認する。
未来に変換する
資金繰り・返済力・投資後の資金余力を見る。
行動を決める
銀行対応・投資判断・改善策につなげる。
大切なのは、試算表を、資金繰り、借入返済力、銀行対応、投資判断に使える形へ変換することです。 試算表はゴールではありません。経営判断のスタート地点です。
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