銀行と話せる数字の作り方 第3回
資金繰りが苦しくなる会社の共通点 黒字でもお金が残らない理由
売上も利益も出ているのに、なぜか預金残高が増えない。 その原因は、損益計算書だけでは見えない「お金の動き」にあります。
決算書や試算表で利益が出ていても、 会社に現金が残るとは限りません。
商品やサービスを販売しても、代金が入金されるまでには時間がかかります。 その一方で、仕入代金、人件費、家賃、借入返済、税金などの支払いは発生します。
また、売上が伸びている会社ほど、売掛金や在庫が増え、 先に必要となる運転資金が膨らむことがあります。
本記事では、資金繰りが苦しくなる会社に共通する構造と、 毎月確認すべき資金繰りのポイントを整理します。
01
黒字でも資金が減る理由
黒字とは、一定期間の売上から費用を差し引き、 会計上の利益が出ている状態です。
一方、資金繰りは、実際に現金がいつ入り、 いつ出ていくかを確認するものです。
売上が計上される時期と、代金が入金される時期が異なるため、 黒字と現預金の増加は必ずしも一致しません。
重要な考え方
利益が出ていることと、 返済や支払いに使える現金があることは別です。
会社の資金状態を判断するには、試算表の利益だけでなく、 売掛金、在庫、借入返済、納税予定、大口支払いまで確認する必要があります。
02
利益と現金は別のもの
損益の視点
利益
売上から原価や人件費などの費用を差し引いて計算します。
資金の視点
現金
実際の入金、支払い、借入、返済、設備購入などによって増減します。
例えば、100万円を売り上げても、入金が2か月後であれば、 売上は計上されても現金はまだ入っていません。
その間に仕入代金や給与を支払う必要があれば、 利益が出ているにもかかわらず、現預金は減少します。
03
資金繰りを悪化させる5つの要因
黒字なのにお金が残らない会社では、 次のような要因が重なっていることが多くあります。
売掛金
売上は計上されているが、代金がまだ入金されていない。
在庫
商品や材料の購入に現金を使い、販売まで資金が固定されている。
借入返済
元金返済は費用にならないが、実際の現金は減少する。
税金・賞与
特定の月に大きな支払いが集中し、預金残高が急減する。
売上増加
売上が増える前に仕入や外注費が増え、運転資金が必要になる。
04
売掛金の回収が遅い
資金繰りが苦しくなる代表的な原因が、 売上代金を回収するまでの期間が長いことです。
商品・サービスを提供
売上を計上
売掛金として待つ
後日入金
入金を待っている間も、給与、外注費、家賃、仕入代金などは 支払わなければなりません。
回収期間が長いほど、会社が一時的に立て替える金額は大きくなります。
毎月確認したい項目
- 売掛金の総額が増えていないか
- 回収予定日を過ぎた売掛金がないか
- 主要取引先の回収条件が長期化していないか
- 売上増加に対して現預金が増えているか
05
在庫が増えている
在庫は、将来販売するために保有している商品や材料です。
会計上は資産として計上されますが、 購入時には現金がすでに会社の外へ出ています。
仕入代金を支払う
商品・材料として保有
売れるまで資金が固定
売れる見込み以上に在庫を持つと、帳簿上は資産が増えていても、 支払いに使える現金は減少します。
在庫は「多いほど安心」ではありません。 販売速度と資金負担のバランスで判断することが重要です。
06
借入返済で現金が減る
借入金の元金返済は、原則として損益計算書の費用にはなりません。 しかし、返済時には実際の現金が減少します。
損益計算書
元金返済は費用にならない
支払利息は費用になりますが、 元金返済は利益計算には含まれません。
資金繰り
元金返済でも現金は減る
元金返済も利息支払いも、 どちらも預金残高を減らします。
そのため、利益が出ていても、年間の元金返済額が大きければ、 返済後に現金がほとんど残らないことがあります。
返済後の資金余力
返済原資 − 年間元金返済額 = 返済後キャッシュ
銀行から借りられるかだけでなく、 返済した後に投資や納税に使える資金が残るか まで確認する必要があります。
07
売上増加で運転資金が膨らむ
売上が増えることは、一般的には良いことです。
しかし、売上代金が入金される前に、 仕入れや外注費の支払いが必要な事業では、 成長するほど先行資金が必要になります。
売上増加
受注量・販売量が増える
先行支出増加
仕入・在庫・外注・人件費が増える
運転資金増加
入金までの立替負担が大きくなる
特に、売掛金の回収が遅く、仕入代金の支払いが早い会社では、 売上が増えるほど資金繰りが苦しくなることがあります。
08
3か月先の資金を確認する
資金繰り管理の目的は、過去の入出金を記録することではありません。
将来、資金が不足する時期を早めに把握し、 支払い条件の見直しや銀行相談などの対策を取ることです。
今月
現在の預金残高と確定している支払いを確認
1か月先
売掛金入金、給与、仕入、返済を反映
3か月先
納税、賞与、大口支払い、資金不足を確認
6か月先
設備投資、採用、追加借入の必要性を確認
資金繰り表に入れる項目
- 月初の現預金残高
- 売上代金などの入金予定
- 仕入、外注、人件費、家賃などの支払い予定
- 借入金の元金返済と利息
- 税金、賞与、設備投資などの臨時支出
- 月末の現預金残高
資金不足が予測できれば、支払条件の見直し、 売掛金回収の早期化、借入相談、投資時期の変更などを 事前に検討できます。
09
銀行に説明できる状態を作る
銀行に資金相談をする際、 単に「お金が足りない」と伝えるだけでは、 融資の必要性や返済可能性を説明できません。
資金不足の原因、必要額、資金使途、今後の入出金、 返済原資、改善策を整理して説明する必要があります。
現状
現在の業績、現預金、借入残高
原因
資金が減った理由と一時的・構造的要因
見通し
3か月先・6か月先の資金残高
対策
回収改善、在庫削減、粗利改善など
資金繰り表は、社内管理だけでなく、 銀行担当者へ会社の今後を説明するための重要な資料になります。
SUMMARY
まとめ
黒字であっても、売掛金、在庫、借入返済、税金、大口支払い、 売上増加に伴う運転資金によって、現預金は減少します。
利益と現金は同じではない
売掛金と在庫は資金を固定する
借入元金の返済でも現金は減る
売上増加には追加の運転資金が必要
3か月先・6か月先の資金残高を見る
FINANCIAL DIAGNOSIS
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