【全7回】「異業種参入」事業計画書の作り方:第6回
「計画通りにいかなかったら?」銀行の不安を消し去るリスク対策とリカバリープラン
第5回では、事業の成功を裏付ける「定量的な資金計画」の作り方をお伝えしました。
しかし、どれほど緻密な戦略と数字を並べても、銀行の融資担当者の頭の中には常に一つの懸念が渦巻いています。それは「もし、この計画通りにいかなかったらどうするのか?」という疑問です。
今回は、新規事業につきものの不確実性をコントロールし、審査の最終関門を突破するための「リスク対策」と「撤退基準」の作り方を解説します。
1. 銀行が「リスクの無い計画」を信用しない理由
「私たちのビジネスは絶対に成功します。リスクはありません」と語る経営者を、銀行は最も警戒します。なぜなら、ビジネスにおいて不測の事態は必ず起きるものだからです。銀行が知りたいのは「リスクが存在しないこと」ではなく、「リスクを正しく認識し、それをどうコントロールするか」という経営者の危機管理能力です。
楽観的なシナリオしか描かれていない計画書は「願望」に過ぎません。最悪の事態(ワーストケース)を想定できているかどうかが、企業の信用力に直結します。
2. 致命傷を防ぐ「リカバリープラン(第二の矢)」
事業をスタートした後、売上が想定を下回った際、単に「もっと頑張って営業します」では銀行に対する回答になりません。具体的な「次の一手」を事前に事業計画書に組み込んでおくことが重要です。
| リスクの種類 | 想定されるワーストシナリオ | リカバリープラン(対策例) |
|---|---|---|
| 営業・売上リスク | 想定通りに新規顧客が獲得できず、売上が計画の50%にとどまる | 既存の優良顧客リストに対し、無料体験や特別割引のダイレクトメールを送付し、初期のキャッシュを確保する |
| 資金繰りリスク | 原材料費の高騰やトラブルにより利益率が悪化し、手元資金が枯渇する | 役員報酬の一時的な減額、または遊休資産(不要な車両や設備)の売却により当面の運転資金を捻出する |
このように「問題が起きたらこのカードを切る」という具体策が用意されているだけで、融資担当者は安心して稟議書を書き進めることができます。
3. 本業との共倒れを防ぐ「撤退基準」
異業種参入で最悪なのは、新規事業の赤字を既存の「本業の利益」でズルズルと補填し続け、会社全体が倒産してしまうことです。
これを防ぐためには、事業を始める前から明確な「撤退基準(損切りライン)」を定めておく必要があります。
「開始から1年経過時点で単月黒字化していなければ撤退する」「累積赤字が〇〇万円に達したら事業を縮小・売却する」といった客観的なルールを事業計画に明記することで、銀行に「この経営者は大やけどをする前に止まることができる」という安心感を与えられます。
4. まとめ:リスク管理こそが「経営力」の証明
不測の事態への備えを論理的に構築した事業計画書こそが、金融機関の心を動かす「生きた計画」となります。ここまで練り上げれば、融資を引き出すための強固な土台は完成です。
次回(第7回)はいよいよ最終回、「事業計画書の完成と、銀行を動かすプレゼンテーションの極意」について解説します。


