【全7回】「異業種参入」事業計画書の作り方:第4回

「社長の気合」に頼らない。本業と両立する「実行体制」と工程表の作り方

第3回までは、誰に、何を、いくらで売るのかという「戦略と収益構造」について解説してきました。
しかし、どれほど完璧な戦略や価格設定を描いても、「誰が、いつ、どうやって進めるのか」が曖昧な計画書では、金融機関の融資審査は通過しません。

今回は、計画を「絵に描いた餅」に終わらせず、銀行員に「この体制なら確実に実行できる」と確信させるための「実行体制と工程表(スケジュール)」の作り方を解説します。

1. 「社長が全部やる」計画が審査で嫌われる理由

中小企業の新規事業において、社長自身が陣頭指揮を執ることは不可欠です。しかし、事業計画書の実行体制に「営業:社長、開発:社長、管理:社長」と書かれていると、金融機関は非常に強い警戒感を抱きます。

なぜなら、「社長が新事業にかかりきりになることで、屋台骨である『本業』の業績が落ちるリスク」を危惧するからです。銀行にとって最も恐ろしいのは、新事業が立ち上がらないことよりも、新事業にリソースを割きすぎて本業まで傾き、会社全体の返済能力が失われることです。

● 金融機関の視点 「社長の気合と根性」という精神論は、計画の根拠にはなりません。「本業の収益基盤を守りながら、無理なく新事業を推進できる客観的な体制」を示す必要があります。

2. 本業と両立する「リソースの切り分け」

現実的な実行体制を作るには、社内のリソース(人・時間)を本業と新事業で明確に切り分ける必要があります。

役割 担当者・体制の例 融資審査での評価ポイント
プロジェクト統括 社長(稼働の20%〜30%を割当) 本業の管理を維持しつつ、新事業の意思決定を行うバランスの良さ
実務・現場担当 既存の右腕社員、または専任の新規採用者 社長のマンパワーに依存せず、実務が継続して回る仕組みができているか
専門業務(Web等) 外部の専門業者へアウトソーシング 自社にないノウハウを抱え込まず、時間を買って立ち上げを早めているか

3. 現実的な「工程表(マイルストーン)」の引き方

体制が決まったら、それを「いつまでにやるのか」という時間軸(工程表)に落とし込みます。ここでも、「来月からいきなり売上が立つ」ような右肩上がりの楽観的なスケジュールは信用されません。

工程表は、大きく以下の3つのフェーズに分けて記載します。

  • 【準備期】 市場調査、商品開発、テストマーケティング、許認可の取得など
  • 【投資期】 設備投資、人材採用、プロモーション開始など(資金が最も出ていく時期)
  • 【回収期】 本格的な営業開始、初期顧客の獲得、黒字化への転換

特に異業種参入の場合、業界特有の許認可取得や、新たな仕入先の開拓に想定以上の時間がかかることが多々あります。「〇月にテスト販売開始」「〇月に初受注」といった明確なマイルストーン(中間目標)を置き、そこにバッファ(余裕)を持たせたスケジュールを引くことが、計画の信頼性を高めます。

💡 実務のワンポイント 工程表(ガントチャート)はエクセル等で視覚的に作成し、計画書に添付しましょう。文字だけで「半年後に開始」と書くよりも、行動の解像度が格段に上がり、本気度が伝わります。

4. まとめ:実行体制が「事業の解像度」を決める

金融機関は、過去の決算書(過去)と事業計画書(未来)を繋ぐものとして「今の実行体制(現在)」を厳しくチェックします。

社長の熱意を否定するわけではありませんが、融資を引き出すためには、その熱意を「誰が・いつ・どう動くのか」という冷徹な組織図とスケジュールに変換しなければなりません。本業を守る強固な防波堤を築いた上で、新事業への挑戦を計画書に落とし込んでください。

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