銀行と話せる数字の作り方 第7回

財務診断で何がわかるのか 銀行目線の課題と改善の優先順位を整理する

決算書や試算表があっても、 銀行から見た懸念点や、次に改善すべき数字まで 説明できるとは限りません。

財務診断は、会社の数字を 銀行目線と経営判断に使える形へ読み替える作業です。

決算書はある。試算表も毎月作っている。 それでも、銀行から見たときに自社のどこが不安に見えるのか、 どこを改善すべきなのかまでは分かりにくいものです。

これは、決算書がないことが問題なのではありません。 決算書に記載された数字を、返済力、資金繰り、 銀行対応、経営判断に使える形へ整理できていないことが問題です。

財務診断は、決算書の良し悪しを単純に点数化するだけのものではありません。 財務の現在地、利益構造、借入返済力、資金繰り課題、 銀行から見た懸念点を整理し、次に取るべき行動を明確にするものです。

本記事では、財務診断によって何が分かるのか、 診断後にどのように改善へつなげるのかを整理します。

01

財務診断は会社の健康診断

財務診断は、会社の健康診断に近いものです。

体の健康診断では、血圧や血液検査などを通じて、 症状が大きくなる前に異常を発見します。 会社も同じように、資金繰り、利益率、返済力、 現預金などの数字から異常を早期に見つける必要があります。

血圧

資金繰り

入金と支払いのバランスが崩れていないか確認します。

体力

自己資本・現預金

赤字や想定外の支出に耐えられる余力を確認します。

心肺機能

借入返済力

利益とキャッシュから返済を続けられるか確認します。

栄養状態

粗利率

売上から十分な粗利を確保できているか確認します。

早期診断の意味

財務上の問題は、大きくなってからではなく、 選択肢が残っている段階で見つけることが重要です。

資金不足が目前に迫ってからでは、 投資の延期、回収条件の見直し、銀行への相談など、 取れる対策が限られてしまいます。

02

決算書を見るだけでは不十分

決算書は、会社の一定期間の経営結果と、 決算日時点の財政状態をまとめた重要な資料です。

ただし、決算書が示しているのは主に過去の結果です。 経営者がこれから判断しなければならないのは、 将来の資金繰り、返済、設備投資、銀行対応です。

PAST

決算書が示す過去

  • 売上はいくらだったか
  • 利益はいくら残ったか
  • 資産と負債はいくらか
  • 借入残高はいくらか
財務診断 数字を判断材料へ

FUTURE

経営者が知りたい未来

  • 今後も資金が足りるか
  • 借入を返し続けられるか
  • 設備投資を実行してよいか
  • 銀行へ何を説明すべきか

財務診断では、過去の決算数字を起点に、 未来の資金繰りと返済力を確認します。

03

まず財務の現在地を確認する

財務診断で最初に行うのは、会社の現在地を把握することです。

現在地が分からなければ、 どの課題を優先して改善すべきか判断できません。

財務の現在地

売上

事業規模

売上がどのように推移しているか確認します。

粗利

稼ぐ力

原価を差し引いた後に粗利が残っているか確認します。

固定費

費用構造

人件費や家賃などが重くなっていないか確認します。

現預金

資金余力

支払いと返済を続けられる資金があるか確認します。

借入残高

返済負担

利益や現預金に対して借入が重すぎないか確認します。

現在地を把握する主な資料

  • 直近2期から3期分の決算書
  • 最新の試算表
  • 借入金一覧
  • 現預金残高
  • 売掛金・買掛金・在庫の状況
  • 今後の納税・返済・大口支払い予定

04

売上ではなく利益構造を見る

売上が伸びていても、 十分な粗利や営業利益が残っていなければ、 会社の返済力は高まりません。

財務診断では、売上規模だけではなく、 売上からどのように利益が残っているかを確認します。

売上高

100

会社が獲得した売上

変動費・原価

原価

仕入、材料、外注など

粗利

粗利

固定費を賄うための原資

固定費

固定費

人件費、家賃、管理費など

営業利益

利益

本業から残る利益

粗利率

原価上昇を吸収できているか

仕入価格、外注費、値引き、商品構成の変化を確認します。

固定費

費用が増えすぎていないか

人件費、家賃、広告費などの増減を確認します。

営業利益

安定して利益が残っているか

一時的な黒字ではなく、継続的に利益が残るか確認します。

利益構造の診断

売上が大きいかではなく、 粗利で固定費を賄い、利益を残せる構造かを確認します。

05

借入返済力を確認する

銀行が見る重要なポイントが、借入金を返し続けられるかどうかです。

財務診断では、返済原資、年間返済額、 借入残高と返済力のバランスなどを確認します。

返済原資

税引後利益 減価償却費

会社が事業から生み出す返済資金の目安

比較する

返済負担

年間元金返済額

1年間に実際に返済しなければならない元金

1

返済原資

利益と減価償却費から、返済に回せる資金を確認します。

2

年間返済額

毎月と年間の元金返済負担を確認します。

3

債務償還年数

返済対象となる借入を何年で返せる状態か確認します。

返済原資より年間返済額が大きい状態が続くと、 黒字でも現預金は減少します。

返済力を見るときは、単年度の利益だけでなく、 返済後に会社へどれだけ現金が残るかまで確認する必要があります。

06

資金繰り課題を整理する

資金繰りは、利益だけでは判断できません。

売上が発生しても、代金が後日入金される場合、 仕入代金や給与などの支払いが先に発生します。 さらに、税金、賞与、借入返済、設備支払いなどもあります。

STEP 1

売上発生

商品やサービスを提供し、売上を計上します。

STEP 2

仕入・経費支払い

入金前に仕入、外注、人件費などを支払います。

STEP 3

売掛金入金

請求後、決められた回収条件で代金が入金されます。

STEP 4

税金・返済

納税、賞与、借入返済などの支払いが発生します。

回収サイト

売上発生から入金までの期間が長くなっていないか。

支払サイト

入金より前に仕入や外注費の支払いが集中していないか。

大口支払い

税金、賞与、設備購入などの予定を反映しているか。

借入返済

毎月の返済によって現預金が減少していないか。

財務診断で確認する資金繰り項目

  • 現在の現預金残高
  • 売掛金の回収条件と回収予定
  • 買掛金・外注費の支払い条件
  • 在庫に固定されている資金
  • 税金、賞与、設備費などの大口支払い
  • 既存借入の元金返済額
  • 3か月先・6か月先の資金残高

07

銀行から見た懸念点を確認する

銀行対応では、銀行が不安に感じる点を 先回りして整理することが重要です。

銀行は、数字が悪いことだけではなく、 会社の状況や改善策が見えないことにも不安を感じます。

1

現預金不足

売上規模や支払額に対して手元資金が少ない。

2

返済負担過多

返済原資に対して年間返済額が大きい。

3

利益低下

粗利率や営業利益が低下している原因が分からない。

4

資金使途不明

借入金を何に使い、いくら必要なのかが曖昧。

5

改善策なし

問題に対して何を実行するのか説明されていない。

銀行が説明しにくい状態

数字だけが提出されている

  • 数字が悪化した理由が分からない
  • 今後の見通しが分からない
  • 必要資金額の根拠がない
  • 改善行動が示されていない

銀行が説明しやすい状態

原因と対策が整理されている

  • 数字の変化と原因を説明できる
  • 今後の業績と資金を予測している
  • 資金使途と必要額が明確
  • 改善策と実行期限が決まっている

銀行対応のポイント

銀行から見た懸念点を把握し、 原因・見通し・対策をセットで説明できる状態を作ります。

08

改善ポイントに優先順位をつける

財務上の課題を並べるだけでは、 実際の改善にはつながりません。

粗利率改善、固定費削減、資金繰り表の作成、 銀行への説明など、複数の課題がある場合は、 緊急度と改善効果をもとに優先順位を決めます。

緊急度

緊急度:高/効果:高

最優先で実行

資金不足対策、返済負担の見直し、粗利改善など。

緊急度:高/効果:低

早期に最低限対応

資料不足の解消、借入一覧の整備など。

緊急度:低/効果:高

計画的に実行

商品構成の見直し、固定費構造の改善など。

緊急度:低/効果:低

後順位または保留

今すぐ取り組む必要性が低い改善項目。

改善効果
利益改善

粗利率、価格、原価、固定費を見直します。

資金繰り改善

回収条件、在庫、支払い、大口支出を見直します。

銀行対応

資金使途、返済原資、今後の見通しを整理します。

投資判断

投資後の利益、返済、資金余力を確認します。

課題を見つけるだけでなく、 何から手を打つかを決めることで、診断が経営改善につながります。

09

診断結果を行動に変える

財務診断は、レポートを受け取って終わりではありません。

診断結果をもとに、何を、誰が、いつまでに実行し、 どの数字で効果を確認するかを決める必要があります。

STEP 1

診断

現状の数字と財務課題を整理します。

STEP 2

課題

利益、返済、資金繰り、銀行対応の課題を整理します。

STEP 3

優先順位

緊急度と効果から、着手する順番を決めます。

STEP 4

改善行動

担当者、期限、具体的な実行内容を決めます。

STEP 5

月次確認

数字が改善しているか、毎月確認します。

資金繰り表を作成する

3か月先・6か月先の入出金と現預金を確認します。

借入一覧を整理する

銀行別残高、返済額、金利、返済期限を整理します。

粗利率を確認する

商品、顧客、事業別に粗利の低下原因を確認します。

銀行説明資料を準備する

現状、課題、資金使途、返済原資、改善策を整理します。

改善アクションに必要な項目

  • 改善する数字
  • 具体的な実行内容
  • 担当者
  • 実行期限
  • 確認頻度
  • 改善できなかった場合の次の対策

10

自社に合う支援方法を選ぶ

すべての会社に、最初から月次の伴走支援が必要なわけではありません。

財務課題の深さ、経営判断の頻度、 銀行対応や設備投資の予定などに合わせて、 必要な支援レベルを選ぶことが重要です。

LEVEL 1

セルフ確認

自社で返済力を確認する

まず自社の借入返済力や簡易資金繰りを確認したい会社向けです。

  • 課題がまだ明確ではない
  • まず自社で数字を確認したい
  • 専門家の継続支援までは不要
LEVEL 2

スポット診断

専門家に財務状態を整理してもらう

現在地、返済力、資金繰り課題、 銀行目線の改善点を一度整理したい会社向けです。

  • 決算書の見方に不安がある
  • 銀行からどう見えるか知りたい
  • 改善の優先順位を整理したい
LEVEL 3

月次伴走

毎月の判断まで継続支援を受ける

資金繰り、銀行対応、設備投資、 予実管理を毎月確認したい会社向けです。

  • 毎月の資金判断が必要
  • 銀行対応や投資判断が多い
  • 改善進捗を継続的に管理したい
まず確認したい セルフ診断キット
一度整理したい 財務診断パック
毎月判断したい 月次社外CFOサービス

支援の選び方

支援内容は価格だけでなく、 自社で判断できる範囲と、必要な支援の関与度で選びます。

SUMMARY

まとめ

財務診断で分かるのは、決算書の点数だけではありません。 会社の数字を、銀行対応と次の経営判断に使える形へ整理します。

01

売上・粗利・固定費・現預金・借入から現在地を把握する

02

粗利と固定費のバランスから利益構造を確認する

03

返済原資・年間返済額・債務償還年数から返済力を見る

04

入金と支払いのズレから資金繰り課題を整理する

05

銀行から見た懸念点と改善の優先順位を明確にする

財務診断はゴールではありません。 自社の現在地を把握し、次に取るべき行動を明確にするための出発点です。

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