【全7回】「異業種参入」事業計画書の作り方:第5回
「どんぶり勘定」は通用しない。銀行が融資を決める資金計画と返済財源の証明
第4回までは、事業の戦略や実行体制といった「定性的」な計画の作り方を解説してきました。
しかし、どんなに素晴らしいアイデアや精緻な工程表を用意しても、金融機関の融資担当者が最終的に稟議を通すための根拠は「数字(定量データ)」です。
今回は、これまでの戦略を数字に変換し、銀行が最もシビアに審査する「資金計画」と「返済能力の証明」の具体的な作成ステップを解説します。
1. 銀行が「どんぶり勘定」を嫌う決定的な理由
「だいたい〇〇万円くらいあれば始められると思います」という感覚的な数字では、金融機関は絶対にお金を貸してくれません。銀行が知りたいのは、社長の熱意ではなく、「貸したお金が事業から生み出される利益によって、確実に返済される論理的な仕組み」です。
計画の数字に根拠がないと、融資担当者は「この経営者は事業のリスクを正確に把握していない」と判断し、企業の信用力そのものに疑問符をつけます。論理的で透明性の高い数字づくりが、融資成功の絶対条件となります。
2. 「必要な資金」を2つに切り分ける
資金計画を立てる第一歩は、新しい事業を立ち上げて軌道に乗せるまでに「何に、いくらかかるのか(必要資金)」を洗い出すことです。これは大きく「設備資金」と「運転資金」に分けられます。
| 資金の種類 | 主な内容 | 根拠の示し方 |
|---|---|---|
| 設備資金 | 機械設備の導入、店舗の改装、システム構築費、車両の購入など | 必ず「業者の見積書」を取得し、1円単位で正確な金額を記載する |
| 運転資金 | 事業が黒字化するまでの家賃、人件費、広告宣伝費、仕入代金など | 第4回で作成した「工程表」と連動させ、数ヶ月分の固定費を論理的に算出する |
特に異業種参入では、初期投資だけでなく「売上が安定するまでの期間の持ち出し(運転資金)」が想定以上にかかるケースが多いため、ここをシビアに見積もる必要があります。
3. 「いくら借りられるか」ではなく「いくらなら返せるか」
必要資金が明確になったら、「では、それをどうやって調達し、どうやって返していくか」を設計します。
ここで重要なのは、銀行の基本的な考え方である「返済財源 = 税引後当期純利益 + 減価償却費」という方程式です。
事業計画上の利益から逆算して「年間〇〇万円なら無理なく返済できる」というベースを求め、そこから「逆算」して借入の適正額や返済期間(例えば5年〜7年など)を導き出します。
4. まとめ:透明性の高い数字が「信用」を作る
資金計画の作成は、面倒な計算作業ではありません。
自社のビジネスモデルが本当に利益を生み出せるのかを客観的にテストし、金融機関という外部のプロフェッショナルに対して「自社の経営管理能力の高さ」を証明する絶好のプレゼンテーションの場です。
熱意に頼るのではなく、冷徹な数字の裏付けを持った資金計画を構築してください。


