銀行と話せる数字の作り方 第6回

試算表を経営判断に使う方法 毎月確認すべき7つの数字

試算表を毎月受け取っていても、 売上と利益だけを確認して終わっていないでしょうか。 経営判断に使うためには、数字の変化とその原因まで見る必要があります。

試算表は、過去を確認する資料ではなく、 次に何をするかを決めるための資料です。

税理士や経理担当者から試算表を受け取っても、 「どこを見ればよいか分からない」という経営者は少なくありません。

売上が前年より増えているか、利益が黒字かを確認することは大切です。 しかし、それだけでは、粗利率の低下、固定費の増加、 借入返済後の資金不足などを見落とすことがあります。

また、試算表は損益を確認する資料であり、 将来の入出金予定までは分かりません。 現預金残高、借入返済、納税、賞与、設備投資なども合わせて確認する必要があります。

本記事では、試算表を経営判断に使うために、 毎月確認すべき7つの数字と、その数字から決めるべき行動を整理します。

01

試算表は作って終わりではない

試算表は、決算前の途中経過を確認するために、 売上、費用、利益、資産、負債などを集計した資料です。

ただし、試算表を受け取るだけでは経営は改善しません。 数字の変化を読み取り、原因を確認し、 次に取る行動を決めるところまで行う必要があります。

STEP 1

数字を確認する

売上、粗利、固定費、利益などの実績を把握します。

STEP 2

原因を考える

数字が増減した理由を、取引や現場の状況から確認します。

STEP 3

行動を決める

値上げ、原価改善、固定費削減、銀行相談などを決めます。

重要な考え方

試算表を見る目的は、 数字を確認することではなく、経営判断を早めることです。

数字が悪化してから数か月後に気づくのではなく、 毎月確認して早い段階で軌道修正できる状態を作ります。

02

毎月確認すべき7つの数字

試算表や資金繰り資料を見る際は、 あれもこれも確認するのではなく、 経営判断に直結する数字を絞ることが重要です。

1

売上高

前年、計画、前月と比べて増減しているか。

2

粗利額・粗利率

売上から原価を差し引いた稼ぐ力が残っているか。

3

固定費

人件費、外注費、家賃などが増えすぎていないか。

4

営業利益・経常利益

本業と会社全体で利益を確保できているか。

5

現預金残高

支払いや返済に必要な資金を確保できているか。

6

借入返済額

利益とキャッシュに対して返済負担が重すぎないか。

7

予実差異

計画と実績の差がどこで発生しているか。

重要なのは、数字を単独で見ることではなく、 売上・粗利・固定費・利益・現金を一つの流れで確認することです。

03

売上は増減の理由まで見る

毎月の試算表で最初に確認する数字は売上高です。 ただし、売上が増えた、減ったという結果だけでは、 次の行動を決めることはできません。

売上は、数量、単価、顧客数、商品構成などに分解して確認します。

売上高を分解する基本

販売数量 × 販売単価 売上高

数量

販売量はどうか

顧客数、受注数、販売個数、稼働率などを確認します。

単価

価格はどうか

値上げ、値下げ、商品構成の変化を確認します。

顧客

誰からの売上か

新規、既存、主要取引先別の増減を確認します。

売上確認で見る比較軸

  • 前年同月との比較
  • 予算・計画との比較
  • 前月との比較
  • 主要顧客別の増減
  • 商品・サービス別の増減
  • 数量と単価のどちらが変化したか

売上減少の原因が顧客数の減少なのか、 単価の低下なのかによって、取るべき対策は異なります。

04

粗利率で本当の稼ぐ力を見る

売上が増えていても、原材料費、仕入価格、外注費などが増え、 粗利率が下がっていれば、会社に残る利益は減少します。

粗利の基本

売上高 売上原価 粗利額

粗利率 = 粗利額 ÷ 売上高

売上は増加

売上だけを見る

販売量が増え、会社が成長しているように見える。

粗利率は低下

実際の利益は減少

原価高騰や値引きにより、売上ほど利益が増えていない。

粗利率が下がる主な原因

  • 仕入価格や原材料費の上昇
  • 販売価格を据え置いている
  • 値引き販売が増えている
  • 低粗利の商品構成が増えている
  • 外注加工費や販売手数料が増えている
  • 廃棄、ロス、作り直しが増えている

売上高だけでなく、 粗利額と粗利率を毎月並べて確認することが重要です。

05

固定費と損益分岐点を確認する

粗利から人件費、家賃、外注費、広告費などの固定費を差し引くことで、 営業利益が計算されます。

固定費が増えると、黒字を確保するために必要な売上高も増えます。

人件費

給与、賞与、社会保険料、福利厚生費など。

外注費

業務委託、加工、専門家、事務代行など。

家賃・設備費

地代家賃、リース料、減価償却費など。

販売管理費

広告、通信、保険、システム利用料など。

粗利

会社が稼いだ原資

売上から原価を差し引いた金額。

固定費

毎月必要な費用

売上にかかわらず一定程度発生する費用。

営業利益

本業の利益

本業から返済や投資に回せる利益。

毎月確認すること

固定費が増えた場合は、 増加分を賄うために必要な粗利と売上を確認します。

採用、賃上げ、広告投資、事務所移転などを行う場合は、 実行後の損益分岐点がどこまで上がるかを事前に確認します。

06

利益と返済後キャッシュを見る

試算表で利益が出ていても、 借入金の元金返済によって現預金が減ることがあります。

元金返済は原則として損益計算書の費用にならないため、 試算表の利益だけでは返済負担を判断できません。

試算表

利益を確認する

売上から費用を差し引き、会計上の利益を確認します。

資金繰り

返済後の現金を見る

元金返済、納税、設備支払いを反映して現金を確認します。

返済後キャッシュの簡易的な考え方

税引後利益 減価償却費 年間元金返済額

= 返済後に会社へ残るキャッシュの目安

借入返済で確認すること

  • 借入金の現在残高
  • 毎月および年間の元金返済額
  • 利益と減価償却費から得られる返済原資
  • 返済後に現預金が増えているか
  • 追加借入や設備投資後も返済できるか
  • 返済負担が特定の時期に集中していないか

黒字かどうかだけでなく、 借入返済後にキャッシュが残っているかを毎月確認します。

07

現預金と資金繰りを確認する

試算表の利益が順調でも、売掛金や在庫が増えている場合、 通帳の現預金は増えないことがあります。

また、納税、賞与、設備購入、大口仕入など、 将来の支払いは試算表だけでは確認できません。

現在

現預金残高

今、通帳にいくらあるかを確認します。

近い将来

3か月先の資金

確定している入金と支払いを反映します。

意思決定

6か月先の資金

投資、採用、追加借入の可否を判断します。

売掛金

売上は計上済みでも、入金前なら現金は増えません。

在庫

仕入代金を支払った後、販売まで資金が固定されます。

納税・賞与

特定月の大口支払いにより預金が急減します。

設備投資

手付金、工事費、自己資金支出が先行します。

試算表と資金繰り表を組み合わせることで、 利益が出ているか現金が持つかの両方を確認できます。

08

予実差異を行動に変える

予実管理とは、事前に作った計画と実際の数字を比較し、 差が生じた原因を確認することです。

差異を確認するだけでなく、 次月以降の対策と着地見込みまで更新することが重要です。

PLAN

計画

売上、粗利、固定費、利益の目標を決めます。

ACTUAL

実績

月次試算表から実際の数字を確認します。

GAP

差異

計画との差額と発生理由を確認します。

ACTION

改善行動

誰が、何を、いつまでに実行するか決めます。

売上未達

受注と単価を確認

新規案件、既存顧客、販売数量、単価のどこに原因があるか確認します。

粗利率低下

原価と値決めを確認

仕入価格、外注費、値引き、商品構成を確認します。

固定費超過

一時的か継続的か確認

採用費、修繕費、広告費などの性質を分けて確認します。

予実確認後に決めること

  • 未達原因は一時的か、構造的か
  • どの数字を改善するか
  • 誰が改善行動を担当するか
  • いつまでに実行するか
  • 年度末の着地見込みをどう修正するか
  • 銀行へ説明すべき変化があるか

09

銀行に説明できる月次管理

銀行対応では、決算書を年に一度提出するだけでなく、 今期の業績、今後の見通し、資金繰り、改善策を説明できる状態が重要です。

1

業績

売上、粗利、利益が計画どおり推移しているか。

2

資金繰り

3か月先、6か月先の現預金がどうなるか。

3

返済力

利益とキャッシュで年間返済額を賄えるか。

4

課題

粗利低下、固定費増加、売掛金増加などがあるか。

5

対策

課題に対して、何を実行しているか。

6

今後の判断

設備投資、採用、借入予定があるか。

毎月

数字を確認

試算表、資金繰り、借入返済、予実を確認します。

四半期

論点を整理

業績、課題、対策、今後の見通しをまとめます。

銀行報告

今後を説明

資金計画、投資予定、借入返済の見通しを共有します。

銀行と話せる数字

銀行に決算書を提出するだけでなく、 数字の背景と今後の対策を説明できる状態を作ります。

SUMMARY

まとめ

試算表を経営判断に使うためには、 売上や利益だけでなく、粗利率、固定費、現預金、 借入返済、予実差異まで確認する必要があります。

01

売上は数量・単価・顧客別に分解する

02

粗利額と粗利率で稼ぐ力を確認する

03

固定費増加と損益分岐点を確認する

04

利益だけでなく返済後キャッシュを見る

05

予実差異を具体的な改善行動につなげる

試算表は、作って終わりではありません。 毎月の数字から異常を早く見つけ、次の行動を決めることで、 初めて経営判断に使える資料になります。

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